
「銀行は雨の日に傘を取り上げ、晴れの日に傘を貸す」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
これは、ドラマ『半沢直樹』でも使われたセリフで、銀行は業績が良い時(晴れの日)に無駄な融資(傘)を行い、業績が悪い時(雨の日)には融資(傘)を断るという意味です。
現役で信用金庫で働く私から見ても、銀行は、『金を稼ぐ能力のある先に融資し、金を稼ぐ能力のない相手には融資しない』と言えるでしょう。
一見ひどいような気もしますが、
銀行の事情もわかれば「仕方ないな」と思ってもらえると思います。
逆に銀行側の考え方を知ることで、資金調達がしやすい企業になることができるでしょう。
今回は、『融資を受けられる企業』になるための心得をお話しします。
目次
- 銀行融資は「投資」の一環
- 返済能力を示す「根拠」の重要性
- 運転資金・設備資金とは
- 担保・保証
- まとめ
銀行融資は「投資」の一環
『融資』とは、大きく括れば『投資』の一種です。
そのため、銀行は、増える見込みがある先にお金を投資します。
大前提、銀行のビジネスモデルは、100万円を貸して年間1万円(1%の場合)程の利息を儲けるビジネスモデルです。
言い換えると、1万円を儲けるために100万円のリスクを負います。
そこに人件費などの経費も掛かってくるのですから、1件たりとも貸し倒れることは許容できない構造になっていることは理解いただけるでしょう。
このため、融資は「返済可能性」が最優先されます。つまり、稼ぐ力のない企業はリスクが高いと判断され、当然融資が難しくなるのです。
ここまで聞けば、
『金を稼ぐ能力のない相手には融資せず、金を稼ぐ能力のある先に融資する。』のは当たり前のことだとわかるはずです。
銀行が、粉飾を見破ろうとするのも、金を生まない設備投資に消極的なのもビジネスモデル上当然のことなのです。
返済能力を示す「根拠」の重要性
返済可能性
もしも、『100万円が一年で絶対に150万円に増える』株式があれば、みんなお金を借りてでも投資しますよね。
あれば利息が掛かったとしても、絶対にそれ以上増えるのであれば問題ありません。
しかし、その『増える根拠』が重要になります。
銀行が融資を行う際には、単に「お金が必要」という理由だけではなく、「返済できる能力がある」ことを証明する具体的な根拠が必要で、「友達から絶対に増えるとに聞いた!」では、お金は借りられません。
過去の実績、財務諸表、事業計画書など、定量的なデータによって示されるべきです。
例えば、
建設業者が官公庁からの受注や大型契約が成立している場合、その収入が確実に発生すると解る『契約書』等の根拠を示すことで、銀行側はリスクを低く見積もることができます。
自社がどのようにして利益を生むのか、根拠となる具体的なシナリオを描き、銀行は、その『根拠』をもとに融資を決定するのです。
運転資金・設備資金とは
運転資金・設備資金とは企業の『投資資金』です。
当たり前のことなのですが、意外と理解していない経営者も多く、銀行員ですらきちんと理解できていない人もいます。
実際に、銀行に入ったばかりの頃の私は、『運転資金』を『事業者版フリーローン』くらいに捉えていました。
そのため、あろうことが「お金がないから借りたい」お客様を探してしまっていたのです。
そんな私だからこそ、運転資金についての、正しい認識についてのお話ができます。
繰り返しますが、運転資金も設備資金も、いわゆる企業にとっての『投資』です。
前述と同様『100万円が絶対に一年で150万円に増える』株式があれば、お金を借りてでも投資するでしょう。
それと同じで、100万円で仕入れして150万円で必ず売れるものがあるなら先行投資すべきなのです。
そのために必要な資金が運転資金になります。
また、
「この設備を導入すれば、これまで1日100個しか作れなかったものが1,000個作れるようになる。そしたら利益が増えるから投資金額も早期に回収できる!だから設備を買おう!」
というのが設備投資です。
両方に共通するのが、『利益のために投資する』ということです。
「不景気でお金が足りないから借入したい。」というケースで必要な資金は、『運転資金』ではなく『赤字補填資金』であり、ただの借金です。その違いを明確に区別することが大切です。
担保・保証
もしも、『お金を増やす根拠』の信憑性が弱い場合に重要なのがこの『担保・保証』です。
簡単に説明します。
「100万円を貸して欲しい。もしも、返せなくなった場合は、代わりにこの100万円の家を差し上げます。」や、
「返せなくなった場合は、私のお父さんが代わりに返します。」
などが『担保・保証』です。
連帯保証、物的保証など色々種類はありますが、ここでは簡単なイメージをつかんでもらえれば良いので割愛します。
もしも返せなくなった場合に、代わりに補償してくれる人・物があれば、お金を借りやすくなるのは当然ですね。
このように、担保や保証を活用することで、銀行側の「本当にお金を増やせるの?」という疑問に対して、保証という面でアプローチすることで、銀行側のリスクを抑えることができ、融資取引を有利に進めることができるようになります。
信用保証協会の保証付き融資
ここまでの話で、返済できない場合の保証が重要だということはご理解いただけたと思います。
しかし、担保に入れられる不動産や、保証してくれる人物が身近にいるとは限りません。
そういった方のために存在するのが、信用保証協会です。
信用保証協会は、中小企業が金融機関から事業資金を借り入れる際、公的な保証人となることによって、融資を受けやすくすることを目的として設立された機関です。
この信用保証協会が提供する「信用保証協会の保証付き融資」では、信用保証協会が金融機関に対して連帯保証を行うため、融資を受けやすくなります。
金融機関にとっては、どんなに信用力のある企業であっても、信用保証協会という公的機関に保証してもらえることが最も安心できるため、中小企業との新規取引においては、ほとんどの場合、この保証付き融資を利用することになります。
まとめ
超低金利時代において、銀行もリスクを最小化しながら利益を上げる必要があります。
そのため、『返済できる見込みのない企業』に融資を行う余裕はほとんどありません。
融資を受けたい企業は、「銀行は雨の日に傘を取り上げる」という批判的な見方ではなく、自己のビジネスモデルや収益力をしっかりとアピールすることが求められます。
銀行からの融資を受けるためには、収益力を裏付ける具体的な根拠を提示し、また必要に応じて担保や保証を用意することが、融資承認への近道です。
企業としては、しっかりとしたビジネスプランを立て、利益を生み出す確固たるシナリオを銀行に示すことが、成功への鍵となるでしょう。
以上、ありがとうございました。
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